花橘54号 連載(6) 先輩セミナー2003 佐分利昭夫さん(50期)九州工業大学講師

先輩セミナー2003

―魅力と特色プラン委員会―

開催日および講師紹介

①9月23日(土)
 内海 功さん(90期)慈恵医科大学病院麻酔科医
②10月18日(土)
 濱野 穆さん(54期)産婦人科医・高齢者福祉
 安部 治子さん(91期)助産師
③10月18日(土)
 小川高義さん(71期)横浜市立大学助教授・翻訳家
④11月15日(土)
 篠崎孝子さん(45期)有隣堂会長
⑤11月15日(土)
 中島陽一さん(50期)声楽家
 村川静香さん(92期)ピアニスト
⑥12月6日(土)
 佐分利昭夫さん(50期)九州工業大学講師


佐分利昭夫さん(50期、九州大学講師)

 本日は「人工衛星と衛星通信」というテーマでお話をしたいと思います。衛星とは惑星の周りを回っている天体のことで、地球の衛星はお月様です。月は周期的に形が変わるため昔から暦に使われ、人間の生活に密接に関わってきました。月には模様がありますが日本では「兎の餅つき」に、外国では「本を読む女の人」など、いろいろな形に連想され、親しまれて来ました。そして多くの人が月へ行ってみたいという夢を抱いてきました。
 そこで先ず、月へ行く乗り物、ロケットの開発に係わった4人の人物を紹介します。ジュールベルヌはSF作家で「月世界旅行」を書き、11.18㎞/sの速度(地球脱出速度)で地球から飛び出せば月に行けることを述べ、多くの人に感銘を与えました。ロシアのチオルコフスキーは宇宙空間で移動可能な乗物は反動を利用したロケットであることを明らかにしました。米国のゴダードは初めて液体燃料ロケットの飛行に成功し、近代ロケットの基礎技術の殆どを開発しました。ドイツのフォンブラウンはV2号ミサイルの開発者ですが、戦後米国に渡り、サターンロケットを開発し、1969年、アポロ計画により人類を月に送り込むと云う大きな夢の実現に貢献しました。
 地上で石を投げると、引力のため直ぐに地上に落ちてしまいますが、投げる速度が早ければ早い程遠くまで届きます。そして7.91km/s以上の速度で投げると、地球が丸いため、落ちながらも地球の表面にぶつからず、地球を回ってしまいます。つまり人工衛星になるわけです。具体的にはロケットを使って空気のない高空でこの速度まで加速します。1957年、初の人工衛星スプートニクが打ち上げられましたが、やがて人工衛星を通信に使う試みが始まりました。
 時代は遡りますが、1945年、アーサー・C・クラークは地球赤道の36,000㎞上空を東方向に回る人工衛星を打ち上げれば地球の自転と同期するので静止して見える(静止衛星)として、これを通信の中継に使う提案をしていました。
 1964年、東京オリンピックの映像を静止衛星を使って米国、カナダへ中継しようという話が持ち上がり、日本の電気通信技術者達の努力によりみごと国際中継に成功しました。こうした多くの人達の努力により衛星通信が実用化されたのです。
 最近の話題として、国際宇宙ステーションがあります。これは地球の表面から約400㎞の高さにサッカー場位の大きさの構築物を建設し、そこで実験を行うという日本を含め世界10数か国による国際プロジェクトです。かつては、米ソが国の威信をかけてロケットを打ち上げていましたが、これからは世界中の人々が協力し、平和的に科学技術を向上させ我々の生活をよりよいものにして欲しいものです。

【生徒の感想】

  • 僕が講義を聞いて一番おもしろいと感じたのは、ロケットがいかに非合理的であるかという話しです。
     ロケットというのは全長53メートルで、全備重量がなんと約289トンもあるといいます。しかもそのうち燃料が約245トンつまりロケットの85%も占めているというのを聞いて本当に驚きました。これはなんと卵の黄身の重さと白身の重さの比と同じなんだそうです。もう驚きの連続でした。もう驚きというよりは、半分ロケットに対して呆れていました。いかにロケットが非合理的なものかということがわかりました。でも逆にこれが今の人間の科学の限界なんだと実感しました。今まではロケットが宇宙に行けるというだけで、めっちゃすごい事だと思っていたのに、この現実を聞いて、自分のロケットに対する見方がかなり変わりました。
     自分がこの講義を聴いて感じた事は、まだ自分の知らない世界がいっぱいあるんだということです。またこういう機会があれば、いろんな事を聞いて吸収したいと思いました。

  • 今回のお話は紙芝居形式で写真や絵を見ながら説明をしてくれたので、より分かりやすかったです。まずは月の話で、月のいろんな模様を見せてもらいました。私はうさぎが餅つきをしているのしかよく知らなかったけど、他にもカニや、本を読む女性など、8種類ぐらいの模様に見えるんだと知り少し感動しました。  次に4人の人の話をしてもらいました。1人目はジュール・ベルヌで、どっかで聞いたことがあるなと思ってたら、前に「海底二万マイル」という本を読んだからでした。 他の3人の人の説明も分かりやすく説明してもらいました。
     そして、次は火星の話でした。軌道のこととか聞いてて少しも分からなかったけど、火星人の話は面白かったです。火星人と思われる写真を見せてもらったけど、面白い姿をしていて本当にこんなのいるのかなぁと思いました。
     次のロケット開発の話も興味深い話でした。いろんな国のロケットも見せてもらえてよかったです。佐分利さんも以前ロケット開発に加わったことがあると聞いてびっくりしました。また、ロケットの仕組みについても教えてもらえてよかったです。日本のH-II Aロケットの全備重量と内燃料が卵の黄身の重さと白身の重さの比と同じなのにもびっくりしました。

2021年07月20日|公開:公開